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雨上がりの西で 三日目の月がニヤついてる 端正なくちびるで 「またひとつ年を重ねたな」 と |
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落日届く 終焉 絆 紫煙 切れた弦 セロは自ら響きはしない 綿毛飛ぶ 指先 歌 妖精 瞬きさえ 幻想という名の真実 飛行機雲 電線 空 写真 線を引く 僕らのそらに明確な線はないゆえ 五線譜 連続性 対位法 音階 旋律 剥離 君と僕のそら 最後の台詞 ピアノの音色 |
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100億光年の少し手前に
蒼く沈んだ惑星がある 100億光年のずっと向こうに 紫に濡れた恒星がある かもしれない ないかもしれない 宇宙は発現したのだから それについては発言しない 海の深さに物足りないと トビウオになった魚 空の広さに飽き飽きして ペンギンになった鳥 蒼紫に染まって泳ぐ それぞれはそれぞれに 雄弁に語るのはいつも風で 風はずいぶん寂しがり屋だ 月はしろがねいろのお顔で いつも何にも語りはしない ぼくは誰だろう? なんて少女のように思い耽っていたら 晩御飯を食べるのを忘れてしまった 静かな 冬の夜空のもと ふっと かすかに風鈴の音が聞こえたんだ |
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瞳の奥は見てはなりません のぞけば狂ってしまいます わたしは見えはしませんの 召し物はお召し召さるるな 空気を召さねばなりません 踊りを踊ってくださいませ 目を回さなきゃなりません あなたはとけていくのです わたしは消えはしませんの 光をとかしてくださいませ 鏡に光はとけていけません あなたは泣いているのです |
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秋は温度を放任するから
摂氏は坂を下ってく 我、下るべくして下り それは喜ばしい事だ と氏は言う 心地良いじゃないか その言い様 ほぅら 赤いマフラーに 首をうずめるように歩こう ほっぺは赤と白に色分けされて 隠してないと恥ずかしいだろ? 少し口数を減らす代わりに 言葉は薄着になってゆくから ひとり言のようにつぶやいて 輪郭の軌跡を残せるように 手をつなぐには 今が一番いい季節だろ? ほぅら 手をつなごう 幻のようだった夏の手を その幻を |
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もう五日間
ずっとずっと お雑煮ばかり食べている 見よう見まねで作ったから これはお雑煮というより模造煮だな 何でもかんでもぶっ込んで でっかい鍋にいっぱいだった 味はちゃんと調えたよ? おれにとっちゃあ一番美味い模造煮だ まだまだいっぱいあるんだぜ どうだいいっぱい召し上がっていかないか? ただし ひとつ言っておく 味の保証はしないぞ だが 安心しろ 腹をこわす心配はない |
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しじまというよりしじみの合間に
退屈が席巻する それはまるで石鹸のように泡立って 老廃物に似た哀しみを 界面活性化させる テレビなんぞを流してみても 太平洋の海面に渦潮が巻くわけじゃない 渦を巻いてみせろよ もう活字が読めないからさ 字が活きているようだから まるで襲ってきそうじゃないか 今朝の新聞だけはなんとか読める もう朝じゃないから 銀杏はすべて裸になってしまったが どうってことはない それはこの退屈な冬を越えたいだけなのさ つむじ風に 渦を巻いてみせろよ 光陰 |
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こっちはね。畏まって「あけましておめでとうございます」なんて頭を下げて、両手でそっとお年玉袋を渡したのにさ。「ふーん、ありがとう」てな感じでさ。興味もなさげにテーブルに置き捨てられてしまう始末。しようがないからきみの持っていたドングリ(これはマテバシイのドングリだね。さすがにクヌギは入らないよ)をおれの鼻の穴に突っ込んで「フンッ」っと飛ばしてみたりしたら、腹をかかえて大喜びか。まったくもってしようがないからその辺にあったボールペンやら、ミニサラミやら、よく分からないオモチャやら、ケータイのアンテナやら、何でもかんでも鼻の穴に突っ込んでやったよ。「マテバシイのドングリは食べられるんだよ」とはさすがに言えなかったな。鼻の穴から飛ばした後では。
きみのいる世界では お年玉より 鼻の穴にドングリが入っているか否かのほうが なにより大事なことなんだね 鼻の穴にモノを突っ込むネタも尽きたので、ふと思い立って“たかいたかい”なんぞしてみたら、何度も何度もせがみやがって。こちとら明日、筋肉痛になってしまいそうだぞ。後で身体測定の記録なんて持って来て、見てみたらなに「115cm・21kg」だと。道理で腕がぴりぴりくるわけだ。 いつの間にやら大きくなったね これからどんどん大きくなるね きみがよろこぶうちは“たかいたかい”ができるように おれも身体を鍛えておくよ 今年の春から小学校に上がるきみ。水色のランドセルなんて見せびらかして「い〜でしょう?わたし水色がすきなんだ。まえはピンクのほうがすきだったけど。ピンクは今はすきじゃないの」ときたもんだ。なんだい今頃はずいぶんランドセルもおしゃれじゃないか。おれの頃は赤と黒しかなかったんだぞ。 きみはこれから水色のランドセルを 教科書いっぱい入れたら結構重いランドセルを まるで羽が生えてるように無重力で 飛び跳ねるように歩いてくんだよ 「たくやくんがすきなんだ」って恥ずかしそうにはにかむきみ。「将来はおれのお嫁さんになってくれるんだろ?」って言ったら、やっぱり恥ずかしそうにソファの陰に隠れてしまった。 きみもいつか 大地がグラグラ揺れるような 景色がグルグルまわるような 恋をする日が来るんだよ 挙げ句の果てには“にらめっこ”をして、さんざんヘンな顔をさせられた。普段使わない筋肉を総動員したさ。もし明日、顔の筋肉まで筋肉痛になったらどうするんだよ。とうとう手まで動員して、鼻の穴やらまぶたやら口の端やらヒリヒリするわい。きみは「負けたー」なんて言って、やっぱり腹をかかえてる。 こちとらきみを笑わせるのなんか朝メシ前なんだよ だがきみがおれに笑われるには まだよっぽど10年は早いんだぞ なんて思いつつさ おれはむくむく笑顔になっていただろう 3月にはお姉ちゃんになるきみに いっぱいのたくさんのやわらかい 幸いあれ |
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