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満ち足りないものアクア・ヴィテ 流浪サーカスはもう去らなくてはならない だが、絶対零度で燃える炎があるならば 水晶の嘘もガラスの真も等価値になる 賢き者よ、さぁ俺を無闇に浪費してくれ エネルギー保存の法則をもって ほんのわずかな輝きにのみ |
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もう一本のタバコに火を点けた 細長い煙とともに意味は全て流れていくのだ はがきは昨夜には雪に埋もれていく 冬なのに、切実が足りないからさ 冬を越える資格のないものは、 容赦なく枯れていくのさ。 ビルの描くグラフの隙間で、星が無闇に輝いた |
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今日も祈りのうたを歌った |
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おまえは「エメラルドグリーンだ!」と言った。 が俺にとってこれはクリムゾンと呼ぶんだが、 その程度の齟齬はどうでもいい。 俺はこのカンバスにはいつも どうでもいい真実を描く事にしている。 今朝のコーヒーの雑味、ゴルゴンゾーラが不味い ぼろぼろのオモチャのネズミ、吸い殻の剣山 |
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どうにもここは少し寒いな 今夜は寝床を間違えたらしい 古傷がやけに痛み出す 俺は旅する白い野良猫 もともと真っ白なはずの 毛並みはひどく汚れちまってるし 寒さをしのぐ背中や腕の毛皮は ケンカばかりで傷だらけだ そうか、今夜は雨が降るんだな なるほど、道理で痛むと思ったぜ となると寝床を変えねばと ふらふらする足で 屋根のある場所を 探していた折りだった 檻の中の一匹のヤマネコに出遭った 俺もいいかげん疲れ果てていたし 今夜の寝床はここにして 旅の慰みに少し話でもすることにした なんだいヤマネコ君よ おまえ、ずいぶん大人しいじゃないか おまえさんは俺たち野良猫の中でも 気位が高いと思っていたぜ おまえ、俺の与太話を信じるか? それなら檻を開けてやるぜぇ だけど血統証は持ってないから 今後は種別は自分で証明しろよ 俺は檻の鍵をかじった まぁこれまで磨いてきた歯だ 開けられる自信はあった なんなら俺の旅についてくるかね? だが、 ヤマネコよ あとはおまえが 野生を証明してみせろ さぁ行くか |
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空の太陽は時折、 溶鉱炉の口から出てくる鉄のように熔けて零れるから おまえはひどく憧れながら怯えてる 夜の月はしばしば、 マグロように凍り付いて氷柱のような霜を降らすから おまえはひどく魅せられながら震えてる それが現実で それが哀しみなのだと おまえが知るには まだ早すぎる おれがおまえに教えなきゃならないのは 冬の日溜まりがいかに暖かく 夏の月明かりが足元を照らす そういう小さな事 風がいかに優しく吹き 人の温もりが ただ温かいだけではない ということ それを教えなきゃならない 憧れを消してはならない おまえの憧れを おまえの魅力を おれは命を賭けて 守ろう |
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ふるいオルゴールを見つけた 焦げ茶色の木枠に一面のガラス 銀のシリンダーが透けて見えている そうっとゼンマイを巻き上げると ぱらりと弾かれた櫛が響き出した 奏でられた曲は「I miss you」だった そうだ、僕は知っていた |
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芽が出ている ちいさなちいさな芽が出ている この真冬の空き地に まるで荒野のようだった空き地に 風が吹き抜けたからだ 女神に愛された風が吹き抜け この地にも雨が降った 雨は芽吹きをもたらした 風よ 我が愛し 我を愛し続けた風よ またここへ戻ってきたのだね ふれた この芽が水仙であればいい この芽がいつか咲けばいい 君が この世に生まれ、そして生きていることに祝福を 我は この祈りをもって、ひと吹きの風を守ろう |
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桜木町の高架下の落書きの暗黙の了解 新しい絵を描くものは前の絵よりも 素晴らしいものを描かなきゃいけない それなりに自由を享受していたし 黒光りした鋭利を持ってた俺は 高架下、それをマイクに 夜通しスキャットしていた |
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オオシロアジサシを 追いかけてみようと決めた あなたのくれた愛で 二重(ダブル)の虹の架かるその先 俺はしろ猫、名は持たぬ あの鳥を見つけたらあなたに手紙を送る この手で描いたスタンプ二文字 |
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終わりの絵と始まりの絵を一枚ずつ描いた 二枚の間はすべて白紙の表紙ばかりが青い絵本 さぁ開いてごらん あなたには何が見えよう 僕にはね 辿らなかった道のすべてが 見えるでしょう |
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気まぐれで傍若無人 奔放で東奔西走 彼女を見つけるのは 空にチェシャ猫を見つけるより難しい 見つけられたものは喝采だ! まごうことなき霹靂だ! うつくしき歌のサイレン いくつの船舵を魅了したろう 砂礫に埋もれたミズクラゲ 珊瑚から去ったカクレクマノミ みな たがいに迷いつつ みな たがいを愛しつつ 赦しを求めて 彷徨うか ともかく今宵は酒宴を催そう 明日など明星の彼方にあろう 宴を照らす 月の陽光(アポルオン) もし、 赤紫色の猫 彼女はどこだい? |
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天と地とわたし 天と地とわた 天と地とわ 天と地と |
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カオスが高じる カオスが昂じる ベッドの中で突如として世界大戦が勃発して キッチンでは顔のないスープの中でティンカーベルが溺れて リュウゼツランの蛇口から蒸気が噴き出す わたわたしている内に新聞紙がアリゾナのトルネードに巻き込まれ 部屋中を古い記事が巡る巡る歴史のように わたしは靴下も履かぬまま浴室へ避難すると 浴槽は間欠泉のように吹き出しながら アリゲーターがバナナ色で出てくる出てくる たまりかねて浴室のドアを閉じるとそこは 寒風吹きすさぶ高架線の鉄塔の上だった はっ、と気付いた私は 現像室にいた、今は完全な暗室だ 現像中、立ったまま居眠りしてしまったらしい 時計を見てみたがわずかな時間だったようだ 完全な暗室にいると時々、 幻覚を見ることがある それは人の姿であったり 幾何学模様であったりもするのだけれど 私は、悪い気分はしない むしろおまえら次は何を見せてくれるのか、 わくわくする方である そう、今現像している写真だが 母とふたりで最期に撮った写真だ 小高い丘で夕日をバックに撮ったものだった 停止液に浸ける頃にはもう像はハッキリしている あとは定着液に浸けて洗って乾かすだけだ 私と母は不思議な関係だった 私は母を憎んでいたけれど、 心のどこかでやはり頼っていたような気もする 写真を水洗して乾かすために吊す 私はこの写真に何を見出そうとしているのか 考えていた。 母の表情だろうか? おそらく母は笑っているに違いない 私の表情だろうか? 私があの時どんな表情をしていたかは思い出せない。 いずれにせよ これが最期の写真だ さぁもう良いだろう 暗室に明かりを灯す 燃えるような夕焼けを背にして 母はやわらかくふくよかに笑っていた 私は今にも泣き出しそうに笑っていた 私は ひとつの乾きかけたナンセンスを 信じることができそうな気がした |
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